山下工務店House Construction部(以下:YHC)の山下陽平が、森島モデルを設計したDESIGN O-TSU大峯竣平さんと「設計」についてお話しします。
前回のお話は「第1話 設計前の“目線づくり”」からお読みいただけます。
山下:森島モデルの顔ともなる「外観」について、あらためて設計したときのお考えを聞かせていただけますか?
大峯:いきなり個人的な好みの話で恐縮なんですが、民家でよく見る、錆びたトタンってあるじゃないですか。僕、あのノスタルジックな雰囲気がすごく大好きで。あの外観って、街の景色を情緒的に作り上げているひとつの要素だと思っているんです。そこで森島モデルでは、「古くからある家のノスタルジーを、現代的に新しい形で見せられないか」と考えたのが、そもそもの原点でした。そこから外壁を選定して、最終的に使用したのが、大きな波を打った「ガルバリウム鋼板(以下:ガルバリウム)」だったんです。
ガルバリウム鋼板:金属素材でありながら錆びにくい外壁材の一種。
山下:僕もガルバリウムはお気に入りの建材で、見た目だけではなく、耐久性も非常に高くてかなり愛用しています。森島モデルを皮切りに、お客さんにはいつも自信を持ってすすめていますね。
大峯:最近ではYHCの代名詞にもなってきましたよね。さっき僕が「錆びたトタンが好き」なんて言ってしまいましたが、ガルバリウムに関しては錆びている姿なんてほとんど見ない気がします。
山下:そうですね。僕の経験上、よく外壁に使われるサイディングであれば25年くらいの耐久性ですが、ガルバリウムは50年くらい平気で持つと思います。それに50年経っても、素地がやられているわけではなく、表面の色合いが褪せている程度の具合なんですよね。そんな優秀な素材を、大峯さんはデザイン的にうまく活用してくれたなと思いました。
サイディング:外壁に貼る仕上げ用の板材。樹脂系、金属系、木質系、窯業系など材質の豊富さが特徴。大峯:デザイン的なことでいうと少し細かい話なんですが、外壁の角の仕上げもポイントでした。通常、外壁の4つの面をつなぎ合わせる際、それぞれの鋼板の角をL字の金物で繋ぎ留めるのが一般的なんですが、森島モデルでは一枚のガルバリウムを曲げて作っています。そうすることで角に継ぎ目のない、端正な印象を出すこともできました。
山下:ぱっと見たときに「なんか整っているな」と感じてもらうためにも、こういった細部の仕上げには大切ですね。“端正な印象”という点では、外壁カラーも後押ししてくれています。ダークカラーの住宅が増えつつある中で、森島モデルのような明るめの家がポンっと入るだけで、とても印象的になりました。
大峯:ダークカラーの外観も高級感が出て良いんですが、こういったカラーも軽やかで品がありますよね。それと北陸は曇天の日が多いこともあって、景色に馴染むという点でも、明るめのグレーを陽平さんと選んだ覚えがあります。山下 もちろんお客さんの好みはそれぞれなので、いろんなカラーを使いますが、街の景観を守る意味でもあまり派手なカラーを選ばないようにはしています。真っ赤な家とかは僕はちょっと提案できないです(笑)
ひとつひとつに理由を込めた、
リズミカルな窓の配置
山下:外観といえば、窓の配置も特徴的ですよね。
大峯:まず窓の種類ですが、陽平さんが普段から使われている断熱性能の高い既製品の窓を使用しました。でも正直な気持ちを言うと、その窓は性能が非常に優れている分、窓枠が太くて、外観的には結構ブサイクになっちゃうんですよ。なので、しっかりと使いこなせるか当時は不安でした。でも陽平さんがそれを選ぶと言うことは品質が高いということですので、「この窓をどうしたら美しく見える形にできるだろう」という姿勢で最初から臨みました。
山下:やっぱり工務店的には家としての機能は高く保ちたいという想いがあるので、大峯さんを悩ませてしまいましたが、結果としてデザイン的にもうまく活用してくれました。特に南面の大きな窓は印象的になりましたよね。
大峯:窓は家の顔を作る大きな要素なので、まずはリビングのある南面に大きな窓を配置しました。通常のセオリーで言うと、メインの空間には人が出入りできるような「掃き出し窓」をつけるのが一般的です。 掃き出し窓:窓の底辺部が床まである、引き戸式の大きな窓。 でもリビングの掃き出し窓って、大体カーテン閉めっぱなしで使えない窓になってしまっていることが多い。それはやっぱり家の顔としてすごくもったいないな、と。なので、室内の吹き抜け空間を利用して、家全体の中間の高さに大きな正方形のFIX窓をつけました。そうすることで外の歩行者から覗かれにくく、かつ室内からは景色や光を楽しめる。そして何より“家の顔”として象徴的な窓となりました。
FIX窓:窓枠に直接ガラスをはめこみ、開閉できないように固定された窓。
山下 いろんな住宅を見ていると、必要でないところにまで掃き出し窓や引き違い窓をつけている家って結構ありますよね。昔からの名残でなんとなく「ここには掃き出し窓をつけなきゃ」という考えが標準的になっている感じもあって。でも実際、機能性や値段の高さを考えると、掃き出し窓って良い選択ではないと僕は思います。そういった意味では、今回の森島モデルの窓は機能もデザインもしっかりと両立していて、かつリーズナブル。とても機能的なプランでした。
引き違い窓:左右二枚のガラス戸をスライドして開閉する窓。大峯:他の窓に関しても同様で、一つ一つに理由を持たせています。「ここには大きな窓をつけて、景色がしっかりと見られるようにしよう」、「ここには下から開閉できる滑り出し窓をつけて、雨の日でも開けられるようにしよう」、「プライベートな空間には小さな窓をつけて、カーテンがいらないように磨りガラスにしよう」とか。やっていることは普通なんですけどね。これまでの家の常識にとらわれない姿勢だったからこそ、結果としてすべて異なる高さに異なる大きさの窓が配置され、他ではあまり見ないアイデンティティが生まれました。
滑り出し窓:下部から外側に開いて風を取り入れられる窓。
山下:最近の家だと、人通りに面する窓はプライベートを考慮して小さな窓をちょこんとつけるやり方も多いですよね。または、大きな窓をつけるときは特注の窓をお金かけて作るとか。自分もどっちかになるのかなと思っていたんですが、その常識がガラリと変わりました。既製品の窓をリズミカルにつけて、光も入れながら家の顔を作り上げる。これまでのプランとは全く異なり、良い意味での違和感のある家になったと思います。
大峯:陽平さんのこだわりでもありますが、特注で窓を作って、家の金額が跳ね上がるようなことは避け、すべて機能性の高い既製品の窓でデザインすることは意識していました。結果としてあるべきとことに窓を配置し、光の差し込む抜けの良い空間を作ることができたので良かったと思います。
山下:室内の吹き抜けに、とても気持ち良い光が入るようになりましたね。それでは次回は、空間づくりや照明の考え方など「室内空間」についてお話できればと思います。
大峯:はい、よろしくお願いします。
大峯 竣平[デザイナー/二級建築士]
1990年石川県出身。金沢美術工芸大学 美術工芸学部環境デザイン専攻を卒業後、設計事務所や工務店(生物建築舎、株式会社済田工務店)勤務を経て、2018年より額村計画室、2020年にデザインオツへ改組。
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